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アップルと自己啓発本とクルマのことなど。

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感情やストーリーが生み出すクルマ

   

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Photo:http://www.nissan.co.jp/SKYLINE/BLOG/DEVELOPER/HISTORY_01/

2代目から7代目までのスカイラインの設計を担当した、櫻井眞一郎さんです。日産のエンジニアの中ではレジェンド的な存在ですね。フェアレディZの父が片山豊さんなら、スカイラインの父はこの櫻井さんといっていいと思います。

前に、ゴードン・マーレイがマクラーレンF1を開発した時、開発メンバーを集めて自分が作ろうとするクルマのイメージを10時間にわたって説明して、誰も席を立つのを許さなかった、という記事を書きました。http://reo01.net/2015/10/11/post-317/

櫻井さんも、マーレイと同じように開発メンバーに理想のクルマのイメージを語ります。

日産のウェブサイトに、そのときのストーリーが載っているのでそのまま引用します。

イグニッションキーを回す。
クルマ全体に命が入った瞬間。
それは、あたかも、主人の近づいてくる足音を感じ取った馬の、目覚めのような動き
――主人の息づかい、主人の動作、主人がこれから何をしようとするのか――
まさに、愛馬が主人の意思を十全に悟っているように、
スカイラインは、あの目的地に向かって小雨の中を走り出した。

主人の意思を悟った愛馬のごとく、小雨の中を走り出したスカイライン。
高速道路に入ると、スカイラインは本来の健脚ぶりを発揮した。
いろは坂を登る。
舗装された道は、まるで滝だった。
降りしきる雨の中を、スカイラインは中禅寺湖畔に姿を見せた。
自然が「むき出し」の中で、2条のライトは闇を切り裂いていた。
あまりにも対照的な暗黒と光。
投影された道と雑木とブッシュを克服しては後へ流す。
走りを拒絶する自然に、たくましく挑んでは、荒い息づかいを後へ流す。
この躍動にはしかし、来るべき時、の期待があった。

一瞬、激しい雷鳴が光とともに轟いた。
猛威を振るう雨と風の中、スカイラインは一瞬だけ暗黒からシルエットを見せた。
白く、青く見えた雷光の下に、シルエットが浮かんだ。
頼るものが何もない大自然の激しさの中、「人馬一体」の意思には、恐れるもの、は何もなかった。

このストーリーには、目標性能も、仮想競合車種も出てきません。でも、これから自分たちが作るクルマにどんなテイストをもたせたいか、オーナーにとってどんな存在にしたいのかが伝わってきます。

「世の中はどんな製品を求めているんだろう?」ということばかり考え、ユーザーにおもねるような製品づくりじゃなくって、「オレたちはユーザーにこんな気持ちになってもらいたいから、自分たちの考えで一生懸命ものづくりをするんだ」ってことですよね。

ネット時代になって、消費者が完全に企業より優位に立った今だからこそ、こういう気概を見たいです。

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