伝道者としてのスティーブ・ジョブズ
僕の考えるジョブズの能力の一つに、「たとえ話の巧みさ」があります。他の人にものごとを伝えるのは、常に簡単ではないですよね。こちらが思っているようには伝わらなかったり、感覚を共有できなかったり。まして、相手が知らない、まったく新しい何かについて説明するのは大変です。
1990年。世界初のパーソナルコンピューターのマッキントッシュを発売してから6年。コンピューターとは何か、パソコンとは何かが普通の人々にはまだよくわからない頃、スティーブ・ジョブズはこう言っています。
“What a computer is to me is the most remarkable tool that we have ever come up with.It’s the equivalent of bicycle for our minds.”
「僕にとってコンピューターは、人間がこれまで発明した中で最高のツールだ。僕たちの知を乗せて走る自転車なんだよ」
割と知られているこのセリフには、実は伏線があります。人類を含むさまざまな動物が1キロをどれぐらいのエネルギー効率で移動できるか調べたところ、トップはコンドルでした。人類は下位の方です。ところが、人間を自転車に乗せたら、ダントツで人類がトップに立ったという話です。
コンピューターがあれば、人間はもっと自分の可能性を広げられる。コンピューターはなんだか怖い存在ではなくて、自転車のように乗りこなせばいいんですよ。ジョブズはそう言いたかったんですね。
聖書を読んだことはありますか?イエス・キリストは弟子たちに話すにせよ、人々に話すにせよ、たとえ話を多く使いました。まったく新しい概念をわかりやすく伝える最良の手段がたとえ話で、ジョブズはその能力に長けていたんだと僕は思います。