【アップルが苦手なもの】ジョブズの性格から
現代のITの巨人が3つあります。
ソフトウェアとハードウェアのアップル。
検索事業のグーグル。
ソーシャルネットワークのフェイスブック。
それぞれ、他社を圧倒する利益やシェアを誇っています。そして、本業は圧倒的でもその他の事業展開はあまりうまくいっていない点も共通しています。
アップルはソーシャルアプリは得意じゃない。
グーグルは多くのサービスを手がけたけれど、現在は大幅に整理した。
フェイスブックは自社製モバイルアプリの浸透に苦労し、買収戦略に切り替えた。
これらは、ポジショニング理論で理解するのがいちばん単純なんですが、今回は、アップルの事業展開とスティーブ・ジョブズの個性を関連づけて考えてみます。
スティーブ・ジョブズは、もともと人づきあいが得意な方ではありませんでした。境界性人格障害やADHD、愛着障害の疑いもしばしばかけられています。もともと精神疾患の確定診断は極めて難しくて、一人の人間に併存していることもあるため、実際にジョブズがどういう傾向だったのは、わかりません。
ただ、周囲の人間の証言によれば、他人への配慮が著しく欠けている傾向があったということは間違いありません。それに、すべての人や物事を最高か最低かに二分するという極端な捉え方も加わって、万人に愛されるというキャラクターではありませんでした。彼の側近であるジョナサン・アイブやピクサー/ディズニーのジョン・ラセターらが忍耐強く、周囲から信頼される性格なのとは対照的です。
クローズドで統合型のアプローチを取り続けたジョブズにとって、開かれたソーシャルネットワーキングはそもそもあまり興味がなかったんではないでしょうか。万人との交流を楽しむよりは、自分の内面の深いところに降りていくことを好んだ人なわけですし。
アップルは、ジョブズの特質を極めて色濃く反映した会社です。そんなアップルがソーシャルアプリを開発してもうまくいかないでしょうし、そもそも彼らのフォーカスはそこにないんでしょう。すばらしいハードウェアで、すばらしいソフトウェアを走らせ、使う人に楽しい体験を提供する。これがアップルのDNAで、それはこれからも変わらないでしょう。
ビジネスが極めて早いスピードで進む現代は、自分のコアにないビジネスを受け入れてくれるような環境じゃないんですね。そういう意味で、音楽事業や検索事業、ゲーム機事業まで事業を広げようとしてきたマイクロソフトは、キャッシュの保有高がアップルの半分ほどになってしまいました。かつてアップルの10倍以上の規模を誇った巨人がです。そんなわけで、現代のITの巨人の姿がそのまま創業者の個性を反映しているとみるのは、個人的にとても面白い見方なんです。