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そもそも、その仕事は何を変えるためにあるのか?

      2015/10/21

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安宅和人著。英治出版刊。

ビジネスにおいて、戦略と戦術が混同されることはあまりにもひんぱんに起こります。なぜだか人は、具体的なことの方が評価しやすく、話しやすいようです。ミーティングをしていても、戦略について議論している時にはほとんど発言しない人が、戦術になった途端、饒舌になるのを何度も見てきました。

朝、会社に行って、その日に片付けなければならないタスクを書き出す人は多いと思います。ライフハックに興味がある人なら、前日に次の日のタスクを書き出して準備しておく人もいるかもしれません。でも、そのタスクリストは、たいてい、

◯◯さんに◯◯の件で連絡する

◯◯の案件の企画書or報告書or見積書を作成する

◯◯について、会議を設定する

などのようなタスクがほとんどではないですか?

ある意味でこれは正しいんです。規模が大きかったり、難易度が高かったりする目標は、細かいタスクに分けないと処理するモチベーションを失ってしまいますよね。

でも、「そもそも自分は何を達成しなくてはならないのか?」という視点から遠ざかると、いくら長時間働いても目的が達成できない状況に陥ってしまいます。

この本は、そのあたりを鋭く衝いている本です。著者は、大学卒業後マッキンゼーに入り、イェール大学で脳神経科学を学んだ後、9.11の影響もあって帰国。その後マッキンゼーからヤフーに転職した人です。

人によって圧倒的な生産性の差がつくのはなぜか?

仕事とは、何かを生み出すためのもので、「考える」ことは大事だが、「悩む」のはムダだと著者は言い切ります。

・「問題を解く」より「問題を見極める」

・「解の質を上げる」より、「イシューの質を上げる」

・「知れば知るほど知恵が湧く」より「知り過ぎるとバカになる」

・「一つ一つを速くやる」より「やることを削る」

・「数字のケタ数にこだわる」より「答えが出せるかにこだわる」

これが、この本を流れる基本的な考え方です。求められるバリューをきっちりと出せるのがプロフェッショナルで、それが出せなければプロとは言えないと著者は考えます。

では、バリューとは何か?著者は、イシューが高次なほど、そして解の質が高いほど両者の掛け合わせでバリューが高くなると説きます。

最初にすべきは「イシューの見極め」

そもそも何が課題なのかをしっかり考え、次に

「イシューの分析」を行ないます。イシューを分解したりして、解決のための仮説をストーリーベースで立てていきます。その後で行なうのが、

「ストーリーの可視化、イメージづくり」です。次いで、

「メッセージの構築」に移ります。すべての仕事が何らかの形で他人を巻き込み、動かしていくものだとすれば、これはそのために必要な作業です。プレゼンテーションのフェーズですね。

このようにして仕事を進め、設定したイシューがどれだけ解決しているかを評価しながらサイクルを回していくことになると思います。

いかにも戦略コンサルタントらしい論理で、展開自体は新しいものではないです。また、原因追及を徹底することの危険性も実際の仕事を通して感じています。

ただ、僕が共感するのは、著者の考える仕事の出発点です。そもそもこの仕事は何を達成すべきなのかから始めないと、仕事がうまくできたかできていないのか判断できないからです。これに関連して思い出すのが、2000年代にベネトン・ルノーF1チームを率い、ミハエル・シューマッハやフェルナンド・アロンソを走らせてルノーF1全盛期をもたらしたフラビオ・ブリアトーレのことです。

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ブリアトーレはインタビューに対してこう言いました。

「F1とは何か?エンターテイメントでショービジネスさ。F1が技術開発の実験場で、市販車へのフィードバックが目的だって?そんなのウソウソ。」

「F1は巨大なテレビイベントなのだから、そのためにF1関係者はF1がどうあるべきかを考えなきゃならない。もちろんテクノロジーが重要じゃないと言っているわけじゃない。ハリウッドの大作と同じで、人に夢を見させるには、高い技術が不可欠なんだ」

自己満足でなく、ユーザーを楽しませて対価を得る。僕はブリアトーレの考え方が正しいと思います。

 

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