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企業スキャンダル:失敗と不正の間にある、途方もない距離とは?

      2015/10/21

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2010年に発表されたiPhone4です。スマートフォンが全体に大型化した現在、今見ると画面の小ささに驚きます。でも、デザインと質感の高さは、最新のiPhone6Sよりも上だと思います。ステンレスの質感や、全体の塊感がすごいんですね。これは個人的意見ですが、ジョブズ不在の影響は、こういう質感の差に現れているような気がします。

ところで、iPhone4の「アンテナゲート」って覚えていますか?これは、iPhone4のデザイン上のポイントである、「ステンレススチールが端末の外周を取り囲んでいる」デザインの弊害で起きたスキャンダルです。ある持ち方をすると、通話の受信感度が下がり、場合によっては通話が切れてしまうことが大問題になったものです。ちょうど、この画像左下の切れ目の部分がそれです。

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電話のような無線機器を、金属で取り囲んでしまうと、受信感度が大幅に低下するという物理的な法則があり、一方でデザイン上の観点から、メタルのフレームを実現したいというデザインチームのこだわりが社内の対立を生みました。エンジニア達は猛反対しましたが、結局デザインにこだわるジョブズとアイブが押し切ります。

そして、発売後に案の定問題が発覚しました。アメリカの消費者向けレビュー雑誌「コンシューマー・リポート」が、「iPhone4は推薦できない」と発表します。この問題で、アップルの株価は、一時90億ドルも下落しました。

全数リコールになるかもしれないという未曾有のスキャンダルが、アップルを直撃します。最終的には、ジョブズによる公式見解の発表と、希望者には受信感度低下を抑制するラバー製カバーを無償配布するという措置、さらには、返品も受け付けるという対応を行ないました。

あなたがもし今、iPhone6を持っていたら、端末の上と下に、ちょうどアルファベットの「D」を描くような樹脂のラインが入っていることがわかると思います。こんなラインがないほうが美しいと思いますが、これがその対策なんです。全てを金属で覆うことはできないんですね。

先ごろ、VWによる排気ガス検査をクリアするための不正が明らかになりました。CEOのウインターコルンのクビが飛び、2015年10月現在、どれだけの経営的ダメージが発生するか見当もつかないような大問題になっています。

これは、アメリカの排出ガス規制をクリアするために、VWが2リッターターボディーゼルエンジン搭載車に、排気ガス検査を受けるとそれを感知し、エンジンの燃焼を制御して「検査モード」で規制をクリアするというプログラムを仕込んでいた、というものです。

ハイブリッド車の流行を見ればわかるように、現代の消費者は燃費に非常に敏感です。でも、燃費を向上させようとすると、排気ガスの基準値をクリアすることが難しくなります。消費者へのアピールと、当局による規制をクリアするという間に挟まれて考え出されたのが今回の不正行為の実態です。

販売台数世界一をトヨタと争い、絶対に負けまいとする経営陣の考えがこの問題の背景にあります。

日本でも、東芝が会計上の不正が発覚して大きな問題になりました。これは、決算発表の数字をごまかすために、事業上発生している原価の支払いを先送りしたりして利益を水増ししていたという問題です。

決算の数字は、企業の経営状態の指標ですから、企業の評判と株価を直接的に左右します。東芝の経営トップは、いわば数字の奴隷となって社内にプレッシャーをかけていたというわけです。

iPhone4のアンテナゲートと、VWと東芝のスキャンダル。アンテナゲートは、デザインを最高の価値基準とするジョブズとアイブの思い込みが起こした問題で、論理的な判断を無視してしまったことは責められるべきです。ただ、この件とあとの2件では決定的な違いがあります。

それは、前者が単純に「ユーザーのために美しいスマートフォンを作りたい」という欲求から出ているのに対し、後者が「自分たちの利益のために数字をごまかしたい」という欲求から出ていることです。

インターネットの普及で、内部告発をはじめとする情報の流出が容易に起こる現在、これからも企業のスキャンダルが絶えることはないでしょう。でも、最善を尽くそうとして失敗するのと、最善を装うために事実を偽るのは天と地ほどの差があります。VWにも東芝にも誠実で優秀な社員はたくさんいるはずです。今回のスキャンダルでショックを受けている人もたくさんいると思います。会社を動かす信念が間違った方向に行ってしまうと、こういうことが起こるんだという教訓だと思います。

 

 

 

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