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アップル成功のレシピ

   

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ケン・シーガル著。NHK出版刊。

著者は、ネクストの時代からアップルの広告に携わったクリエイティブ・ディレクターです。クリエイティブ・ディレクターというのは、広告の制作に関する直接的な責任者です。グラフィックを学んだアート系の人と、コピーライティングからキャリアを始めた人に分かれます。

この人は、あのThink differentのCMのナレーションコピーを書いた人でもあり、iMacの名付け親でもあります。ちなみに、スティーブ・ジョブズの公式の伝記にも登場します。

この本からは、ジョブズ=アップルが、どのように広告コミュニケーションを考えてきたのかということと、事業のあり方そのものも同じ考え方で進めてきたことがわかります。

シンプルを突き詰める、です。

「シンプルと単純は違う。ものすごく複雑な課題を、ひたすら考え抜いてその本質が現れるまで簡潔にする」

それは容易なやり方である複雑さとの戦いなんだと語っています。

著者は、アップル以外の企業、例えばインテルやマイクロソフトのエピソードも紹介します。そこは、複雑さが支配する世界。提案された企画は、社内の複雑な力関係にさらされ、何人もの意見にさらされて、どんどんオリジナルの魅力を失っていきます。でも、それが普通です。僕自身もたくさん経験しました。

だからこそ、このシンプルという哲学が威力を発揮するんですね。

広告制作において、ジョブズは形式ばったプレゼンを嫌い、CMコンテ等をごく普通に説明してくれ、と著者らに言います。広告に関わることを楽しみ、自分のアイデアも出す。実際、Think differentのCMのナレーションコピーの中の一行は、ジョブズが書いたものです。

有名なジョブズの激昂についても書かれています。戦車の砲塔のように相手をロックすると、ありったけの砲弾を浴びせる。著者も二度その洗礼を受けます。でも、著者は言います。ジョブズはただ正直だったんだと。普通の人は他人に嫌われたくない、感じよく思われたい、という気持ちからあいまいにしてしまうことをジョブズはしなかっただけだと。そして、その残酷なまでの率直さが、自分たちの仕事を測るものさしになったんだと。

また、これも有名な、ジョブズは何かをできないとは考えなかったというエピソードも出てきます。広告を雑誌に載せるプランについて、代理店の担当者は、スケジュールがきつすぎて無理だと回答します。

著者もそれに同意するのですが、ジョブズは「そいつはおかしいぞ」と言って、徹底的な交渉を要求します。そして、ゴリ押しとも言える交渉の結果、広告は雑誌に載りました。内情がある程度わかるだけに、僕は「ジョブズムチャクチャ言うなあ」と同情的になりましたが(笑)でも、やれば必ずできる、と心の底から信じたからこそ、多くの「ありえないこと」が実現したんだと思います。

この世を支配する複雑さとの戦い。

単純とは違うシンプルさの熱狂。

ジョブズとアップル、広告チームを駆り立てた哲学に触れることができます。

 

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