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アップルと自己啓発本とクルマのことなど。

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企画とはサービスであり、人を幸せにすること。

   

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ご存知の方も多いと思いますが、小山薫堂さんは、「料理の鉄人」や、「カノッサの屈辱」などの番組の構成、放送作家から、映画「おくりびと」で監督を務め、あの「くまモン」の生みの親でもある人です。東北芸術工科大で、「企画構想学科」を立ち上げて、学生たちに企画について教えてもいます。「料理の鉄人」を手がけたくらいなので、グルメな方でもあり、食に関するコラムも魅力的です。

さて、テレビやラジオと同様、広告の仕事も日々企画です。

そもそもなんでその仕事が必要なのか=Why?からはじまり、

広告目標を達成するための戦略=How?が練られ、

その戦略を実現するための企画=What?を立てていきます。

この人の企画は、どこか温かみがあって、その多才さにも惹かれて読みました。全編を通して、語り口調で書かれていて、読みやすい本です。

「企画というのは、サービスであり、誰かを幸せにするものである」という表現は、この人の企画と同様、わかりやすくて親しみやすいものです。無理に小難しく考えないで、日常で出会うものに対して、こうしたらもっとよくなるんじゃないか、とか、こうしたらもっと人はうれしくなるんじゃないか、とか考えましょう、というお話です。

マーケティングの世界にいると、専門用語が飛び交い、シンプルなことを難しく説明する人や、頭が良さそうに思われたい人なんかがいます。わかりやすく話すと馬鹿にされるんじゃないかと不安だからかもしれません。

でも、コピーライターで「ほぼ日新聞」の糸井重里さんもそうですが、その道のトップの人の言葉は、偉ぶらず、平易な言葉が多いんですよね。

本に戻りますが、「ブランディング」について説明するエピソードがいいんですよ。昼休みの後の講義で、大学生たちにある主婦を紹介します。そして、その人にカレーの作り方を聞きます。

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その人の作ったカレーを今食べたい人?と手を挙げさせると、ランチの後なので手が挙がらない。

そこで小山さんは、主婦の人に息子さんの話を聞いていきます。

「息子さんは何をされてるんですか?」

「野球ばっかりやっているんです」

「どちらにいらっしゃるんですか?」

「アメリカにいます」

「息子さんのお名前は?」

「ありふれた名前ですけど、一朗という名前でして」

もうおわかりですね?その人はイチロー選手のお母さんで、そのカレーは、イチロー選手が毎日食べていたカレーだったんです。そして小山さんはもう一度学生たちに聞きます。この方の作ったカレーを食べたい人?と。すると全員が食べたい!って答える。

「これがブランディングですよ」と小山さんは教える。ごくありふれたものでも、背景や物語を加えることで特別なものに変わる。それがブランディングだと。僕は、この説明以上にわかりやすいブランディング論を知りません。

冒頭で書きましたが、企画というものを誰かに、すごい!と感心してもらうためのものと考えたら、それは自分中心の考え方です。でも、企画というのは誰かを喜ばせたい、幸せにしたい、と思って考えるなら、それは相手中心でまったく別のものです。

本を読んでいると感じるのですが、小山さんはちょっと今一歩なものについて、「なんで面白くないんだろう、だめなんだろう?」とアラ探しはしていないと思います。原因追及に気をとられるよりも、「どうしたらもっと面白くできるだろう、もっと楽しくできるだろう」という”How”の発想で企画されているように思います。

テレビやラジオの仕事でなくても、広告の仕事でなくても、日常をより楽しく。目に見える誰かを幸せにする。それが最高の企画だと思います。よい企画を考えたいすべての人におすすめです。

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