【ジョブズのプレゼン】世界を魅了したプレゼンテーション
2015/12/15
スティーブ・ジョブズが既成概念を覆したものの一つに、新製品のプレゼンテーションがあります。多くの企業による新製品のお披露目は、だいたいこんな感じです。
・司会が挨拶
・役員かCEOがお堅い感じの挨拶
・新製品の登場(ステージに出てくるか、除幕。車は除幕が定番)
・プロダクトマネージャーによる製品紹介と、会場にいるメディアとの質疑応答。
・司会による締めの挨拶で終了
今日もどこかで、このような新製品の発表が行われているはずです。僕も、イベントの仕事をいろいろやってきたので、この形式の発表会なら、あっという間に進行台本が書けます。でも、ジョブズの発表は違います。
ジョブズはスーツでなくジーンズを穿き、司会に呼ばれずひとりでステージに登壇し、台本を持たずスライドのリモコンだけ持って、聴衆に向き合います。
「みんな、今日は集まってくれてありがとう。そろそろ始めようか」
ジョブズが見せるスライドの特徴は、文字が少なく画像が多いことです。
時には文字が全くないスライドもあります。そして、数字をうまく使います。
「今までに売れたiPhoneは400万台」
「iTunesのアカウントは6500万」
「Leopardは発売90日で500万本以上を出荷」
のような感じです。聴衆は「うわ、すごい」と思わされてしまいます。
今もそうですが、基調講演の冒頭には、アップルの業績を示すことが多く、その後でいよいよ噂の新製品を発表します。
(そうそう、そもそも普通の企業は、最初から何を発表するかを明らかにしないと、メディアに来てもらうことができません)
僕が思うに、ジョブズの新製品紹介の真髄は、
「なぜ、この製品が必要なのか」
「なぜ、この製品を作ったのか」
から始めるところにあると思います。けっして、「この製品は何がすごいのか」から入ることはありません。なぜなら、その製品を作った理由を説明しないかぎり、聴衆は「なるほど!」と思わないからです。「この製品はこんなにすごい」と言われても、聴衆は「ふうん、それで?」と思うからです。
「思想」と「技術」で、「技術」が先に来ることはありません。「思想」が先に来ると、人は共感できます。共感してから、具体的な話を聞こうと思うわけです。
スライドのテキストにも特徴があります。多くの場合、端的なヘッドラインやリード(見出し)がつきます。短いフレーズは印象に残りやすく、受け手にわかりやすいものです。
「世界で一番薄いノートブック」
「1000曲をポケットに」
「電話の再発明」
「なぜ、これが必要なのか」の後に、「これは何か」が一言で続くわけですね。その後、その製品をほめたたえる段階に入ります。
「こんなに薄いんだ」
「こんなに軽いんだ」
「こんなことができるんだ、すごいだろう?」
ここでのポイントは、製品を客観視して、聴衆と同じ立場で驚いて見せることです。ここでも共感がカギです。CMを流して、喜ぶこともたびたびありました。
うれしそうに話す彼を見て、聴衆もつりこまれます。
その後ジョブズは締めにかかります。どんなに製品が素晴らしいかを説明した後、
「それがいくらか」
「それはいつから買えるのか」
を伝えます。
価格は拍手をもって受け入れられ、多くの場合、発売日は予想よりもはるかに早く、「今日」ということもよくありました。驚きでプレゼンを締めるんですね。こうして聴衆は、「今日はいいことを聞いた(見た)。早くあの製品が欲しいもんだ」と思い。SNSで仲間に知らせます。
そして、世界中で新製品の広告があふれだします。
この方法で、ジョブズは世界を魅了したんですね。