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ブランドの命がけの跳躍

      2015/11/05

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BMW

BMWというブランドがありますね。いわずと知れたドイツの高級車メーカーです。会社の創立は1916年。バイエルンの航空機製造会社がルーツです。BMWのロゴにある、青と白のグラフィックは、バイエルンの空とプロペラなんです。

第一次世界大戦でドイツは敗戦国となり、航空機の開発が禁じられてしまったので、BMWは洗練されたオートバイの製造を始め、その後1928年に自動車の製造を始めます。小型でスポーティなサルーンが人気となり、これが今に続くブランドのDNAになったと僕は思います。

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第二次世界大戦でまたもや敗戦国となったことや、ナチスへの協力が咎められてBMWは苦境に陥りますが、復活のきっかけは、1960年代初めにデビューした1500というモデルです。これも、コンパクトでスポーティなサルーンで、アメリカで絶賛を博します。当時の巨大なアメリカ車では満足できない層に人気を博したんですね。マーケティングの観点で考えると、ニッチなポジションを確立したと言えます。

bmw-1500

この写真を見て、何か思いませんか?僕は、今から50年以上前のこの広告に、BMWのブランドエッセンスが詰まっていると思うんです。4ドアだけど、乗っているのはファミリーじゃない。お洒落なカップルがスタイリッシュなセダンに乗って、同じようにお洒落なカップルと何か話している。

「これからどこかに出かけるのかい?」

「そう、ちょっと週末の旅行にね」

みたいな会話かもしれないですね。

BMWは、コンパクトでスタイリッシュで、運転することが楽しいプレミアムセダン。ひたすらゴージャスなアメリカ車とも違うし、質実剛健でちょっと鈍臭いイメージのメルセデスよりも若々しい。これが、絶好のポジショニングで人々の憧れになったわけです。

広告戦略でも、BMWは素晴らしい歴史を誇ってきました。アメリカで認知拡大を図るため、BMWは広告代理店3社を招いてコンペを実施します。アメリカ国内でのマーケティングプランと、BMWを一言で表現するヘッドラインが課題です。

コンペに勝ったのは、新進気鋭の代理店、アミラッティ&ピュリス。ヘッドラインは、「究極のドライビング・マシン」このヘッドラインは、その後長く使われ、1996年と2012年以降も再び使われるなど、BMWの魂に触れる言葉なんですね。

ちなみに、スティーブ・ジョブズもこのヘッドラインが大好きで、アップルを追われた後で興した会社ネクストでは、アミラッティ&ピュリスを起用したほどです。

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車好きにとっては、BMWって、緻密な回り方をするいいエンジン。いかにも思いのままに走りそうなスポーティなデザイン。適度にタイトでダンディなインテリアを連想します。

僕が担当していた、ある自動車会社のエンジニアは「BMWがうらやましい。あんなクルマが作れたらいいなあ」って僕に言いました。「ひとつひとつの性能は他車が優れていたりするけど、バランスが良くて気持ちいい。車づくりにブレがない」って。

専門的に言えば、車体前後の重量バランスは50対50。ハンドリングのよいFRという駆動方式を、伝統のレシピとして保ってきました。

ところがBMWの成功を見て、宿敵メルセデスがコンパクトセダン市場に参入します。190です。

190

その後190はCクラスと名前を変え、矢継ぎ早にスポーツモデルを投入して、BMWを追い上げます。

僕が思うに、メルセデス以上にBMWを焦らせたのはアウディだと思います。アウディは、BMWと同様に、エンジニアリングに定評のあるメーカーでしたが、近年デザインにものすごく力を入れて、かつ、品質感の向上に全力を挙げてきました。

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スタイリッシュで都会的なデザイン、特に女性に大人気。走りも非常に洗練されている。メルセデスとアウディに挟まれて、BMWは苦しくなりました。特に最大の市場のアメリカでメルセデスと戦うべく、BMWは近年モデルをどんどん拡大しています。

そして、とうとう2013年に、これまで作らなかったFFのミニバン=2シリーズのアクティブツアラーを登場させます。

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BMWは大好きな自動車メーカーですが、この戦略の結果がどうなるか興味があります。歴史的にはこのブランドは、それまでと違うジャンルに進出してうまくいったことはほとんどありませんでした。人々のイメージの中には、BMW=高性能で高級なセダンという像が強くあるからです。ある女の子が僕に言いました。「BMWのセダンがとても好きなの。ステーションワゴンでもイヤ」

ブランド論の第一人者、神戸大学名誉教授の石井淳蔵氏は、かつてブランド拡張の難しさを、「ブランドの命がけの跳躍」と表現しました。さて、どうなるでしょうか。

追記:個人的な意見

ミニみたいに、別のブランドで出せばよかったのに(笑)

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